私は今現在、資産を貯金しておくのではなくほとんど運用に回していますが、どうしても運用に抵抗があるという方も多いのではないでしょうか?
投資というのはどうしてもリスクがあります。長期的にみてずっと右肩上がりで最高値を更新し続けているアメリカダウのチャートだって、今後もずっと右肩上がりである保証もありませんし、もしかしたら数年後、今の半額になっているかもしれません。
こういう心配は心理学的にも当然のことで、経済心理学では人は無意識のうちに利益を得ることよりも損失を回避しようとするそうです。
経済心理学では人が損失を回避しうるという行動特性をを証拠づける有名な設問があります。一度やってみましょう。
まず最初の質問です。
- 100万円を100%もらえる
- 50%の確率で200万円をもらえる
では、2番目の質問です。
- 100万円の借金が半分になる
- 100万円の借金が50%の確率でチャラになる
最後に、3番目の質問です。
- じゃんけんをして買ったら100万円もらえるが、負けたら80万円支払わなくてはならないが、このじゃんけん大会に参加するか?
この3つの質問についてどう思われますか?
私は最初の問いでは①、2番目の問いでは②、3番目の問いでは参加しないを選びました。
実はこの問い、私の答えがごく一般的で一番多い回答パターンらしいです。
特に最後のじゃんけん大会の質問に関しては、50%の確率で100万円もらえ、50%の確率で80万円失う訳ですから、参加した方が得になる可能性が高いにも関わらず、参加しない人が多数だそうです。
つまり、この3つの問いから人間の経済的な行動についてこういうことが言えます。
- 利益を得られる状況では確実に利益を取りに行く
- 損失を被る可能性がある状況ではリスクを負ってでも損失を回避しようとする。
- 利益を得るか損失を被るかの状況では、利益を得るよりも損失を回避することを優先する。
以上、要は人はとにかく損をするのが嫌いな生き物なのです。
これはできるだけ得をする運用方法よりも、なるべく損をしない運用方法の方が多くの方が求めている運用であると言い換えることもできます。
では、今回はなるべく損をしない元本保証型もしくは比較的安全に運用できる資産運用方法についてご紹介していきたいと思います。
まずは説明するまでもないかもしれませんが、預金の無意味さについてご説明します。
銀行預金(定期預金・普通預金)は低金利下では全くの無意味
ほぼ100%の方が銀行に預金していることと思います。
私も預金は無意味と主張しながらも、日本に住んでいる限りはその利便性からどうしても預金せざるを得ません。
しかし、銀行預金は全くといっていいほどメリットがありません。

これは、2019年3月度の定期預金の平均金利のデータですが、仮に100万円を1年間定期預金しても、ざっと利子は100円しかつきません。
ATM手数料を年に一回払うとしたらマイナスになります。
定期預金でこれですから、普通預金はもっとひどいことになります。

100万円を1年預けてわずか10円です。
もっと利率の良い楽天銀行などのネット銀行を探したとしても定期預金で0.2%、普通預金で0.1%程度ですので、たいした違いはありません。
これが現金で持っておくことは損であると投資家の人が考える最大の理由です。とにかく日本円は利子が低すぎます。
そしてこの低すぎる利子に更に税金がかかります。それは株式投資で得た利益等と同じ20%程度ですが、100万円預けて100円の利子を得たところで20円分は税金として引かれます。
そう考えると預金にはほとんどメリットがないと感じられるのも無理はありません。
ちなみに過去最高の日本円の預金金利は1974年の3%です。バブル時代はおよそ2%程度で、定期預金であれば6%以上の金利がついたことも珍しくなかったそうです。
これだけの金利があっても株価がぐんぐん上がっていた時代ですから、当時がどれだけ勢いのある時代であったかということは金利からもよくわかりますね。
せめて1%でもあれば預金するメリットはありそうですが、現代の0.001%では全くメリットがありません。
では、預金以外の比較的安全な運用先についてご紹介します。
外貨預金、外貨MMF、外貨FX
日本円が利子が低いのであれば、一時的に外貨で持つことを考えてみます。
高金利外貨で有名なのはトルコリラ、南アフリカランドなどですが、さすがにこれらの国の通貨は変動が大きすぎるので、世界の基軸通貨とも言われているアメリカドルでの預金を考えてみます。
一口に外貨を持つといってもざっと3つの方法があり、外貨預金と外貨MMFとFXの3種類があります。
それぞれ簡単に説明すると下記のようになります。
- 外貨預金:外貨建ての預金のこと。通常は日本円で預金するがドル預金の場合はドルで預けておくということ。
- 外貨MMF:短期国債で運用する外貨建ての投資信託。元本割れを起こしたことは今まで一度もない。
- FX:外国為替証拠金取引。証券会社の口座に証拠金を預けておき、その証拠金を担保にドルを購入する方法。最高で証拠金の25倍もの取引が可能。
※いずれも債券とは異なりいつでも売却可能です。
そしてそれぞれの手数料と金利をまとめたものがこちらです。(外貨預金:SBI銀行、外貨MMF:SBI証券、FX:SBIFX)

これを見るとFXが圧倒的に有利です。ただ、FXの場合は最低購入通貨単位が1万ドル単位であるため、金額調整がやや難しいです。
また、FXの場合は証拠金を使ったレバレッジ投資であるため、うまくリスク管理ができないと大きな損失を被る可能性があります。
今回は、日本円をいかに安全に運用するかのお話ですので、FXはレバレッジをかけず、レバレッジ1倍(レバレッジをかけない)のFXと考えてお話しします。
金利だけを見るとFX>外貨MMF>外貨預金の順で、為替手数料に関してもFXが優勢です。
よって、ドル円を1万ドル単位で購入される方はFX、それ以下の少額の場合は外貨MMFの方がお得です。
FXと聞くとハイレバレッジで高リスク、ギャンブルというイメージがありますが、案外盲点だったレバレッジ1倍のFXは手数料も安く、かなり効率的に運用できる商品です。
もちろん外貨預金は日本円以外の現金を持つという方法なので、外貨預金であろうとMMFであろうとFXであろうと為替レートによっては損失を被る可能性があります。しかし、日本円にはない外国の高い金利を得られるという点ではメリットがある投資法の1つになります。
ただ、外貨を保有する欠点としては、ドル基準では元本割れすることはないが、円基準では元本割れすることもよくあるという点です。
例えば1万ドル持っていたとして、為替レートが1ドル100円だろうが1ドル120円だろうが、1万ドルは1万ドルです。しかし、1万ドルを持っていて、それを円に換金したい場合、1ドル100円のときでは1万ドルで100万円、1ドル120円のときでは1万ドルで120万円となるため、為替レートの影響を受けます。
これにより当然利益がでることもありますが、損失を被る可能性もありますので、その点には注意が必要です。
また最後に、金利において注意しておきたいのは、今現時点で円の金利が低く、ドルの金利が高いため、利率がそこそこいいのですが、アメリカの政策金利が引き下げられたりすると、あまりうま味がない投資法になりますので、自身が保有している通貨の政策金利動向はチェックしておきましょう。日本にいるとイメージしにくいですが、外国の金利は短期間でも割と大きく変動することがあります。
外貨MMFは2016年以降、税制改正により為替差益に関して税金がかかるようになりました。よって外貨MMFに投資するメリットはかなり小さくなりました。外貨MMFをするならFXと私が推奨するのもそれが理由です。古い情報では未だに外貨MMFは非課税なのでお得、と記載しているサイトもありますのでご注意されてください。
日本国債・社債債券投資
では、国債や社債などの債券投資はどうでしょうか。それぞれご説明していきたいと思います。
個人向け国債
個人向け国債は個人でも購入できる国の債券です。
個人向けの日本国債の利率は、0.05%で(マイナス金利が導入されているため個人向けの利率は下限の0.05%で抑えられている)当分0.05%のままと予想しています。
つまり、100万円を預けても500円にしかなりません。
しかし、一応定期預金よりはマシなうえに、国が元本と利息の支払いを保証しているので、安全性は極めて高いため、低金利の近年では、国債はかなり人気の商品です。
ただ一つだけ注意点があり、購入したあと1年間は解約できないことです。
逆に言うと3年満期の国債だろうが、10年満期の国債だろうが1年持てばそれ以降は自由に解約でき、解約した際は手数料がかかるものの、元本は保証されます。
よって1年以上使い道がない場合であれば国債を買っておくのも一つの手です。
社債
社債はトヨタやソフトバンクなどの企業が発行している債券です。
国債よりも総じて利率が高く、人気のソフトバンク社債は2018年に発行したもので6年満期で1.6%程度となかなか魅力的な商品です。
ただ、利率が高いということはそれだけリスクもあるということなので、それに関しては注意が必要です。
ちなみに社債のうちで最も利率が低いのはトヨタ社債で、2017年に発行した社債で3年満期で0.001%、5年満期でも0.03%です。
つまり、トヨタ社債を買うなら国債を買った方が得な訳です。
※余談ですが、ちなみになぜ国債よりも社債の利回りが低いのかというと、個人向け国債には金利がどうであれ0.05%が最低利率と決められていますが、社債は決められていないため、超低金利の今現在ではこのような国債の利率の方が高いという状況が生まれる訳です。
このように社債は発行する企業によって大きく利率が異なるので、利率によっては魅力的な投資先です。
ただ、利率が高いということはそれだけ利率を高くしないと買い手がつかないということですので、利率の高い社債を購入する際には注意が必要です。
社債とは企業の借金ですので、企業が経営難になったときは利息が支払わられなくなったり、最悪投資した金額が戻ってこなくなることがありますので、購入する社債を発行する企業について、社債が満期になるまで経営が順調であるかどうかは調査しておかなくてはなりません。
トヨタ社債の利率が低いということはそれだけ経営が安定していて、数十年後も充分経営が順調でであろうと思われているからなのですね。
IPO投資(新規公開株投資)
最後にご紹介するのはIPO投資です。
なかなか聞きなれない言葉かもしれませんが、IPOとは簡単に言うと新しく上場する企業の株を買う権利を一般投資家に配分するということです。
基本的に証券会社に口座を持っており、IPO対象銘柄を購入できるだけの資金を口座に入れておけば誰でも購入できるのですが、購入したい人が殺到しますので、抽選で当選した人じゃないと購入できません。
逆に言えば購入が殺到するぐらい利益が出るということです。
IPO投資の実績は2018年で95銘柄中値上がりしたのは80銘柄、2017年では94銘柄中84銘柄が、2016年では85銘柄中62銘柄が値上がりしました。
これを簡単にまとめたのが下表になります。

あり得ない話ですが、仮に2018年度全てのIPOに当選したとすると2210万円の利益が出ていたことになります。そして特筆すべきが値上がり率が80%以上、1銘柄当たりの利益は2018年で28万円になるというところです。
つまり、1回でも当たれば28万円の利益は得られていたことになります。こう考えるとIPO投資は当選さえすれば、かなり高い確率で、かつ十万円単位で利益を出せる投資法といえます。
しかも事前にIPO対象銘柄をインターネットで調べれば値下がりしそうなIPO銘柄を避けることは容易なので、値上がりするであろう銘柄のみに絞り抽選に申し込めば、ほぼ100%近く儲けることができます。
こう書くとおいしいところだらけのIPO投資ですが、そんなにおいしい話が転がっているはずはありません。
最大のネックは当選率が低いことです。IPO投資がおいしい投資方法であることが世にどんどん広まって年々申し込み数が多くなっているそうです。当選確率は1%もないと思った方がよいでしょう。
しかし、私は2018年半ばからIPO投資を始め、2019年3月までに2件当選しています。その2件の合計利益が35万円なので悪くない投資ですし、証券会社の口座に資金を入れておくだけなので、預金金利も受け取ることができますし、もちろん元本も保証されます。
つまり、IPO投資とは「上場する前の株を手に入れる権利の抽選に参加し、当選したら上場したその時に売る」という作業をするだけの投資で、完全に運任せなのです。
まとめ 債券投資、外貨投資、IPO投資どれも面白い投資法
以上、ここまで資産を安全に運用する方法をご紹介しましたが、この3つはどれも面白い投資法です。
私自身、社債は買ったことはありませんが、国債も買ったことがありますし、外貨預金、外貨MMF,外貨FX、IPO投資のどれも経験しました。その経験を踏まえて私の考えを書きます。
国債のメリット・デメリット
デメリットは普通預金よりマシとはいえ0.05%の利率で満足できるのかというところです。ネット銀行の定期預金の方がいくらか良い利率のものがありますが、国債は国が保証しているので安心度はやはり高いです。これが大きなメリットではないでしょうか。
数年使う予定がない現金を保有している方で元本を割るのが絶対に嫌な方にはおすすめです。
マイナス金利になろうが、0.05%の最低利率はこれ以上下げられることがないので、これから購入される方は金利固定型よりも金利変動型の方がおすすめです。
金利変動型にしておけば、今後金利が上昇したら、それに伴い国債の利率も上がります。
社債のメリット・デメリット
買ったことがありませんが、元本保証型で1%以上の利率があるのは非常に大きなメリットです。
問題は社債を発行した企業の安全性ですが、これの判断が少々難しいところがデメリットです。実際、私は数年後の企業の存続性を評価することはできないと判断したので、社債は投資しませんでしたが、企業の存続性に不安はないのであれば貯金しているよりもはるかに効率的です。
実際、例に挙げたソフトバンク社債は売り出しと同時に申し込みが殺到したそうです。それだけ人気があるということですね。
ただし、あまりに利率が高い社債に関しては注意が必要です。
外貨投資(外貨預金・外貨MMF・外貨FX)のメリット・デメリット
この中では私は外貨FXで中でも米ドルを保有することをおすすめします。2016年の税制改正で外貨MMFの為替差益にも課税されることになったので、外貨MMFに投資するメリットはほぼなくなりました。
問題は為替レートの影響を受けることですが、安定している米ドルであれば、そこまで極端な円高、円安になることは珍しいでしょうし、アメリカの政策金利が2%ちょっとなので、ほぼ0%金利の日本との金利差は非常に魅力的です。
それに外貨を保有することは、円のみを保有している時のリスクヘッジにもなるというメリットもあります。1ドル160円とかの超円安になった際には、円だけを保有していると自分の購買力が落ちますが、米ドルをある程度保有しておくと、超円安などの非常時のリスクヘッジができます。
ただし、各国の金利は割と上下するので注意は必要です。
IPO投資(新規公開株投資)メリット・デメリット
前述したとおり、基本運任せの投資法なので無料で数十万当たる宝くじを購入できるという楽しみもある投資法です。
デメリットは当たらなければ普通預金と同じという点と、IPO申し込みが割と面倒くさいといったところです。
年間90件程度あるIPO銘柄に対してすべて証券会社の口座にログインして手動で申し込みしなくてはなりません。
私はコツコツやるのが好きなので特に問題はないですが、これが面倒くさくてIPO投資を辞めたって人が結構います。
ただ、宝くじ感覚のワクワク感と1発当てれば数十万という金額の大きさが大きなメリットだと考えています。
以上、比較的安全な投資法として、3つの方法をご紹介しました。
私は株式投資が好きなので、今はこの中でIPO投資と一部米国株式のプール金としての外貨MMFしか保有していませんが、安定的に運用したい方はいずれかを検討されても良いと思います。
下リンク先の私の別記事でも言及していますが、日本円で貯金するというのは利率がほぼゼロですし、物価上昇に伴いどうしても目減りしてしまいます。
貯金が無駄になる?私が考える貯金は目減りする資産である理由と対策
ご自身の資産を増やすだけでなく、守る意味も兼ねて、何か安全な運用先を検討するのも一つの選択肢ではないでしょうか。
以上、一般論から私見まで長々と書いてしまいましたが、何かご参考になれば幸いです。
あとは余談ですが、今挙げた3例以外にも学資保険なんかも元本保証型にも関わらず返戻率が100%以上のものもあります。
ただ、保険の場合は返戻率が100%以上になるまでの資金拘束期間が20年以上だったりすることもありますし、途中解約すると元本割れをしたりする商品ですので、今回は言及しませんでした。
しかし保険には、掛金が所得税額から控除されるという保険にしかないメリットがあり、考えようによってはこれは大きなメリットとなりえます。
それについてはまた次回に詳しく記事にできればと思っております。