マンションを購入される際には物件価格をもとにローンを組んで、月々の返済額を決めまることかと思います。
しかし、マンションには管理費・修繕積立金あるいは駐車場と毎月かかる価格が他にあります。
そしてこの中でも修繕積立金は確実に値上がりするので注意が必要です。
今回はこの修繕積立金はどれぐらい上がるのか、どれぐらいが適正なのかについて記事にしました。
分譲マンションの修繕積立金は購入時は低く設定されている
マンション購入を検討された方であれば、マンション管理費は新築時よりも年々高くなると聞かれたこともあるかと思います。
それはまさにその通りで、特に新築マンション購入時には修繕積立金はたいてい低く設定されていると思って良さそうです。
というのも実は修繕積立金については、(後に添付していますが)国交省から平成23年に「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」という具体的にどれぐらいが適正かという資料が出ています。
この資料が一般に公開された背景には分譲マンション販売会社が購入時に買いやすくするために修繕積立金を購入当初はかなり低く設定しているケースが多かったため、我々消費者に適正価格を示す目的で発行されました。
つまり、国交省もマンション販売会社が提示する修繕積立金の額は最初は低く設定していることを認めているというふうに捉えることもできます。
分譲マンションの修繕積立金はどれぐらいが適正価格なのか
次に、実際にどれぐらい高くなるかについて調べてみました。
前述した国交省発行の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」から抜粋すると、下のように決められています。

これをもとに、実際の物件の修繕積立金が妥当か調べてみます。
これは、ある地方都市の駅徒歩1分の立地にある10階建てのマンションで、私が実際に商談した時にいただいた資料から抜粋したものです。
仮にタイプAのものを例にすると、タイプAは80㎡で修繕積立金が6200円と設定されています。
これを国交省のデータに合わせて計算しますと、この物件は10階建てで延べ床面積が5000㎡未満ですので、
タイプAの場合:80㎡×218円/㎡・月=17440円/月
となり、マンション購入時に設定されている6200円の修繕積立金と比べると11240円も不足していることになります。
修繕積立金不足金:6600円ー17440円=ー10840円
つまり、この場合、修繕積立金は本来毎月17440円必要なのにも関わらず、6600円しか積み立ていないので10840円の赤字が生じていることになります。
ここまではマンションの専有面積から算出する修繕積立金の妥当額のケースです。
分譲マンションで機械式駐車場の場合は更なる修繕積立金が必要となる
この物件に関しては、善友面積から割り出す修繕積立金以外にも、追加で積立金が必要となるケースでした。
それは、この分譲マンションには駐車場として機械式駐車場が設置されていたからです。
実は機械式駐車場の場合は追加で修繕積立金が必要になってきます。
これも国交省発行の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」に記載されていました。

そしてこれが、私が商談した先ほどと同じ分譲マンションの駐車場の構成です。
こちらの物件で使用されているのは機械式駐車場の3段昇降式でした。
機械式駐車場の数が合計で9台分ありますので、機械式駐車場分により追加でかかる修繕積立金の合計は
6040円/台×9台=54360円
となり、これをこの分譲マンションの総戸数26戸で割ると1戸あたりの修繕積立金負担額が算出できます。
54360円÷26戸≒2090円/戸
なぜなら機械式駐車場は共有エリアとみなされているからです。
実例 新築分譲マンションの修繕積立金の不足金
ここまでを整理して、実際に私が商談した新築分譲マンションの修繕積立金の不足金額を実際に算出してみます。
新築購入時に設定されている修繕積立金:6600円/月
専有面積から算出した実際に必要な修繕積立金:17440円/月
機械式駐車場を設置していることによる追加の修繕積立金:2090円/月
修繕積立不足金=(17440円+2090円)-6600円=12930円/月
つまり、この新築分譲マンション購入時に設定されている修繕積立金では、毎月12930円足りていないということが明らかになりました。
そう考えると毎年約15.5万、10年で155万円の修繕積立金が不足することになります。
この不足分は結局、分譲マンション購入者が負担することになりますので、これがマンション購入時から修繕積立金が上がると言われる理由です。
不足した分譲マンションの修繕積立金はどのように回収されるか
では、前述したように分譲マンションの修繕積立金は総じて不足する傾向にあります。
しかし、マンションといえど老朽化により修繕することは避けて通れないため、修繕費用をどこかから徴収する必要があります。
分譲マンションの修繕積立金を段階的に上げる方法
国交省のガイドラインでは、修繕積立金の積み立て方法として2パターン紹介されていますが、現在の分譲マンションはほとんどが段階的に積立金を増やしていく段階増額積み立て方式を採用しています。(下図参照)

この段階増額積み立て方式のグラフでは少しずつ上がっていくように描かれていますが、実際は5年後、10年後などの節目の年に段階的に引き上げられていくことが多いようです。
分譲マンションの大規模修繕時に一括徴収
分譲マンションでは定期的に大規模修繕といって工事の足場を組み、防水工事や外壁塗装をします。
これがだいたい10~15年周期に実施されますが、その時に修繕積立金が不足している場合、その不足相当額を一括で徴収されることがあります。
その額はマンションの設備や規模によって異なるのですが、一戸当たり、60~120万円が多いようです。
10年おきに数10万かかるわけですから、かなり大きな負担がのしかかってきます。
マンションの管理組合がローンを借りて工事費用をまかなう
マンションとは一戸建てと違い、複数の世帯が住んでいるので、なかなか修繕積立金が値上げできなかったり、一時金を徴収できなかったりすることも珍しくはありません。
その場合は、分譲マンションを購入する際に個人がローンを組むように、マンションの管理組合がローンを借りて工事費用を捻出するケースもあります。
これはいわば最終手段ですが、マンション管理組合がローンを組むということは結局住民が払うことになるので、修繕積立金が増えるのと同じことになります。
むしろローンの方が金利がかかる分、負担額が多くなる傾向にあります。
まとめ 分譲マンションの修繕積立金はほぼ確実に上がるため、購入時に余裕をもったローンを組むこと
これまで書いた通り、分譲マンションの修繕積立金はマンション購入時はかなり安く設定されていると思って間違いありません。
ただ、前述したように、分譲マンションに対して目安となる適正な修繕積立金は、占有床面積より算出できるため、あらかじめどれぐらい修繕積立金が上がるかを推定しておいた方がよいと思います。
細かい計算はいろいろありましたが、だいたい床面積1㎡あたり200円の修繕積立金が適正で、プラスアルファとして機械式駐車場を設置している場合は余計に修繕積立金がかかると認識しておけば、マンション購入の商談中でも瞬時に適正な修繕積立金と提示されている修繕積立金にどれぐらい乖離があるが、判断することができます。
仮に修繕積立金が月に1万円足りない場合は、分譲マンション購入時の住宅ローン支払額について、修繕積立金不足のため追加徴収分として1万円余裕がある支払スケジュールにする必要があると私は考えます。
事実として、修繕積立金が不足してしまうという事態が80%以上の分譲マンションで起こっているとも言われています。
これは新築マンションだけに限らず、中古マンションでも起こり得ることです。
分譲マンション購入といえば、立地、マンションの設備、間取り、物件価格、周辺環境などかなり多くの項目をチェックしなくてはなりませんが、この修繕積立金についてもチェック項目のひとつとすべきなのです。
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